前回は「何をやるか」を解決しました。今回はさらに見えにくい落とし穴を扱います。「どこまでやれば終わったと言えるのか」という問題です。この落とし穴が厄介なのは、一見まったく問題のなさそうな日常的な指示の中に、たいてい潜んでいるからです。
「見ておいて」という一言に潜む、二つのまったく違う作業量
「これ、時間がある時にちょっと見ておいて。」――この言葉を曖昧な指示だと感じる人はほとんどいません。しかし実際には、まったく異なる二つの暗黙の前提が、この言葉の裏に重なっています。
| キーワード | 日本人上司の暗黙の期待 | 外国人スタッフの文字どおりの理解 |
|---|---|---|
| 「時間がある時に」 | 実は緊急の意味を含んでいる:手元の優先度の低い仕事は後回しにして、今日の終業までに片付ける | 文字どおりの最低優先度:本当に何もすることがなくなってから対応すればよい |
| 「見ておいて」 | 深く見直すこと:データを丁寧に照合し、潜在的なミスを見つけ、必要なら直接修正する | 文字どおり目を通すこと:この資料の存在を把握すればよく、一通り読んで保管しておく |
2日後に上司が結果を聞きに来ると、スタッフの側では実質的な進展がなかったり、「見ておいた」だけで何も直していなかったりする。上司は「主体性がない、仕事を見て見ぬふりをしている」と受け取り、スタッフの側は「言われたとおりにやったのに、今になって責められている」と感じる。これは態度の問題ではありません。「終わった」というこの二文字が、これまで一度も双方の間で共通に定義されたことがなかった、というだけのことです。
DoD:「うまくやる」を、打鍵できるチェックリストに翻訳する
ソフトウェア開発の業界には、この問題を解決するための既成の概念がすでにあります。Definition of Done(完了の定義、略してDoD)です。その核心はシンプルです。ある仕事が「完了」しているかどうかは、誰か一人の主観的な判断に委ねてはいけない。あらかじめ一枚のリストを用意し、「完了」を、一つずつチェックできる客観的な状態に翻訳しておく必要がある、というものです。リストの項目がすべてチェックされて初めて、仕組みの上で「完了」と判定されます。
この考え方を現場に当てはめると、すべてのタスクカードの裏側に、曖昧さのないチェックリストを一枚添えるということになります。
- ☐ 手動工具(全6点)がすべてA号工具箱に戻されている
- ☐ 床面に直径1cmを超える金属くずが残っていない
- ☐ 掃き出した廃材が「金属類」指定のゴミ箱に分別投入されている
このリストがあれば、上司の主観的な基準の違いから生じる「手直しをめぐる言い争い」を根本から消すことができます。スタッフは上司の頭の中にある「きれい」がどんな状態かを推測する必要がなく、リストと照らし合わせて一つずつ確認すればよいのです。
もう一つの極端にも要注意:細かすぎるチェックリストはかえって機能しない
基準を明確にすることは、チェックリストを長くすればするほど良いという意味ではありません。現場でDoDを導入する際によく見られる逆効果は、上司が「絶対に曖昧さを残さない」ことを追求するあまり、数十項目にもおよぶ大部のチェックリストを作ってしまうことです。ネジ一本の向きまで細かくチェックさせようとした結果、スタッフはたいてい二度と読まなくなり、チェックリストは壁の飾りと化し、実際の作業は結局これまでのやり方に戻ってしまいます。
良いチェックリストがどういうものかは、実は他の分野ですでに実証されています。世界保健機関(WHO)の手術安全チェックリストは、わずか19項目で、所要時間はたった2分。それでも複数の研究で、手術の合併症と死亡率を3割以上引き下げたことが示されています。その力の源は「あらゆる細部を網羅すること」ではなく、「最も見落とされやすく、しかも見落とした時の結果が最も深刻な、ほんの数点を正確に押さえること」にあります。現場のDoDチェックリストも、同じ発想で設計するべきです。手直しになるかどうかを実際に左右する3〜5項目を押さえればよく、工程全体をまるごとリストに詰め込もうとする必要はありません。
誰がこのチェックリストを書くのか
前回の5W2H指示書と同じく、DoDチェックリストの作成もよく同じところでつまずきます。腕の立つベテラン職人ほど、自分が何を根拠に「合格」と判断しているのかを、うまく言葉にできないのです。ここでも前回触れた方法が有効です。仲介役の人物をベテラン職人のそばにつけ、質問を重ねることで、「なんとなく良さそうだから大丈夫」といった感覚を、「金属くずの直径が1cmを超えていない」といった、チェックできる客観的な状態へと少しずつ言葉にしていきます。職人はそのリストが正しいかどうかを確認するだけでよく、実際の翻訳作業は仲介役に任せます。
5W2Hで「何をやるか」を定義し、DoDで「どこまでやれば終わりか」を定義する。この二つの道具が揃って初めて、一つの仕事を最初から最後まで明確に言葉にできたことになります。次回はもう一つ別の方向の問題を扱います。道具が揃っているだけでは十分ではなく、上司が日々口にする言葉のあり方そのものも、体系的に見直す必要があるということです。




