外国人スタッフと向き合う現場の五つの摩擦

外国人スタッフと向き合う現場の五つの摩擦

前回はマクロな数字を取り上げました。今回は工場や建設現場に話を戻します。現場の管理者が外国人スタッフと向き合う中で日々ぶつかる、代表的な五つの摩擦です。この五つの場面を並べてみると、共通した形が見えてきます。どちらも嘘をついているわけではなく、それぞれが正しいと信じるルールに従って行動している。ただ、そのルールが一度も表に出されたことがない――そして、そのずれは往々にして国籍や文化的背景の境界線に沿って現れます。

摩擦①:手直しをめぐる言い争い

製造・建設現場で最もよく起きる口論の火種です。

典型的な場面
外国人スタッフが加工した部品は、機能的には問題なく、寸法も公差の範囲内に収まっている。しかし日本人の上司は、表面にわずかな傷があったり、並べ方が完全に整っていなかったりすることを理由に不合格と判断し、全数の手直しを命じる。
外国人スタッフの受け止め方
使えるし、基準も満たしている。上司はわざと難癖をつけている、あるいは偏見を持っているのではないか。
上司の受け止め方
仕事への姿勢がいい加減で、プロとしての心構えに欠けている。

摩擦②:納期直前の「実は終わっていません」

納期直前になって「危機」という形で表面化するパターンです。

典型的な場面
納期当日、上司が進捗を確認すると、外国人スタッフはあっさりとこう答える。「途中で技術的な問題があって、今のところ半分くらいしか終わっていません。あと3日必要です。」
外国人スタッフの受け止め方
任された以上、自分で何とかするのが当然。予測できなかった困難にぶつかったのはサボりではないのに、なぜ叱られるのか。
上司の受け止め方
これは悪意ある隠蔽であり、無責任だ。進捗がまずいと分かっていたなら、なぜもっと早く言わなかったのか。

摩擦③:「ちょっと難しい」をめぐる責任の押し付け合い

問題が起きたあと、双方が譲らず、信頼関係が完全に壊れてしまうケースです。

典型的な場面
日本人の上司が遠回しに「この案は、ちょっと難しいかもしれません」と伝えた。日本語の言い回しとしては、これはほぼ明確な拒否と同じ意味を持つ。ところが外国人スタッフは文字どおりに受け取り、「難しいけれど試してみてもいい」と解釈して資源を投入し続け、結果的に損失を招いてしまう。
外国人スタッフの受け止め方
はっきり「だめ」とは言われていない。今になって責任を押し付けられている。
上司の受け止め方
十分に伝わるように言ったはずだ。これは指示に従わなかったということだ。

摩擦④:予告なしの退職と連絡不通

人事担当者にとって最も頭の痛い、労務上の契約違反です。

典型的な場面
給料日の翌営業日、あるいは長期休暇明けの初日に、外国人スタッフが突然出社しなくなる。上司の手元に残るのは、SNS経由で届いた短いメッセージだけ。「もう行きません。お世話になりました。」寮の荷物すら片付けられていないこともある。

このケースがもたらすのは、感情的な驚きだけではありません。現場では即座に人員の穴が生じ、シフトの緊急調整や、より高いコストをかけての代替人員探しを迫られます。五つの摩擦の中でも、最も直接的に生産に打撃を与えるものです。

摩擦⑤:休暇と残業をめぐる対立

仕事に対する価値観が最も直接ぶつかり合う場面で、時にはコンプライアンス上の対立にまで発展します。

典型的な場面
生産が最も忙しい時期に、外国人スタッフが帰国しての里帰り、結婚式、あるいは宗教上の行事を理由に、2週間連続の休暇を申請する。上司は「現場の人手が深刻に不足しており、出荷に影響が出る」として、休暇の却下や短縮を求める。
外国人スタッフの受け止め方
休暇は自分の正当な権利であり、会社に干渉される筋合いはない。深刻な場合は労働基準監督署に相談したり、同郷の仲間と共に消極的な抵抗に出たりすることもある。
上司の受け止め方
このタイミングで休暇を取るのは、チームや会社の状況をまったく考えていない。

五つの摩擦の裏にある、同じ一つの構造

この五つの場面を並べてみると、一つの共通した構造が見えてきます。外国人スタッフは文字どおりのルールを忠実に実行している――機能的に基準を満たせば合格、休暇の権利があれば取ってよい、定時が来れば帰る。一方で日本人の上司は一度も文書化されたことのない、暗黙の秩序を守っている――細部まで突き詰める、途中経過は逐一共有する、集団の利益を個人の都合より優先する。どちらが正しいかという話ではなく、それぞれの国では成立している二つの職場の習慣が、同じ現場の中で同時に動いているということです。

対立の原因は、どちらかの人間性に問題があるからではありません。「紙に書かれたルール」と「書かれてはいないが当然守るべきとされているルール」、この二つの仕組みが同じ現場で同時に稼働しながら、互いに見えていない――それこそが構造的な原因です。
摩擦の場面外国人スタッフが従っているルール日本人上司が守っている秩序
手直しの争い機能を満たせば合格細部まで突き詰める
納期直前の発覚自分で解決すればよく、途中経過の報告は不要途中経過は共有し、ずれがあれば事前に知らせる
指示の解釈違い明確に「だめ」と言われていなければ試してよい遠回しな言い方にすでに否定の意味が含まれている
予告なしの退職辞めたくなったらいつでも辞めてよい退職には手順に沿った引き継ぎが必要
休暇をめぐる対立休暇は正当な権利集団の利益が個人の都合に優先する

だからこそ、単に「もっとコミュニケーションを」「お互いを理解しよう」といったアドバイスは、現場ではあまり機能しません。そもそも双方が前提にしているルールが違うからです。現場の管理者にできることは、外国人スタッフの行動様式を正そうとすることではなく、「日本人なら分かって当然」とされてきた暗黙の秩序の部分を、書き出せる、言葉で説明できる具体的な基準に変えていくことです。そして、その基準に沿って外国人スタッフも動けるようにすることです。これが、次回以降で具体的に掘り下げていく内容になります。

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