賃上げの恩恵は誰のもの?年齢別データで見る格差の実態と、40代が正直に向き合うべき現在地

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大企業の賃上げが相次いで過去最高を更新する一方、その恩恵の分配は決して均等ではない。就職氷河期世代の苦境から、40代前後が置かれているリアルな現在地まで、直視してみよう。

賃上げは本物だ。しかし、全員が上がっているわけではない

近年、日本の大手企業が相次いで大幅な賃上げを発表している。大和ハウス工業は新卒初任給を月35万円に引き上げ、明治安田生命は約4万7,000人の従業員に平均5%の昇給を実施。ユニクロ、サントリー、三井住友銀行なども続々と参戦した。数字だけを見れば、明るいニュースに思える。

しかしこの賃上げの主な原動力は、企業業績の劇的な改善ではない。むしろ深刻な人材不足に対応するため、企業が若い労働力を確保しようと入場価格を自ら吊り上げた結果だ。

日本の雇用の70%は中小企業が担っている。大企業の賃上げ幅が軒並み5%以上なのに対し、中小企業の平均は3%前後にとどまる。この格差が人材の大企業集中をさらに加速させ、地方の中小企業の存続を脅かしている。

政府は現在、大企業が下請けサプライヤーへの単価引き下げを行うことを防ぐ法整備を進めている。サプライチェーン全体に利益が流れるようにすることで、中小企業にも賃上げの余地を生み出そうという狙いだ。

誰が上がり、誰が下がるのか:残酷な年齢別対照表

以下は、厚生労働省の統計をもとに、2019年(コロナ前)と2024年の各年齢層における賃金変化幅を比較したものだ。

年齢層別 賃金変化率の比較(2019→2024)

年齢層賃金変化背景
20代前半+11%新卒採用競争が激化し、入場価格が大幅に上昇
20代後半+10%若年層全体が人材争奪戦の恩恵を受けている
30代+8%上昇幅は縮小し始めるが、依然プラス成長
40代+5〜+6%若年層との差が顕著に開く
50代前半−3.1%実数がマイナスに転落。最も厳しい立場

賃金変化率 可視化

20代前半
+11%
20代後半
+10%
30代
+8%
40代
+5〜6%
50代前半
−3.1%

傾向は明快だ。若いほど上がり、年を取るほど上がらない、あるいは下がる。これは偶然ではなく、企業のリソース配分ロジックがそのまま数字に現れた結果だ。

就職氷河期世代:時代に二度、轢かれた人たち

現在50歳前後の人々は、日本では「就職氷河期世代」と呼ばれる。1990年代末から2000年代初頭に社会に出た彼らは、バブル崩壊後もっとも過酷な就職環境に直面した。

学生時代

第二次ベビーブームの子どもたちとして、受験競争が激しく、学業プレッシャーは極めて高かった。

20代・社会へ

平成大不況に直撃され、正社員になれない若者が続出。派遣・アルバイトなど非正規雇用に流れることを余儀なくされた。

30代・耐える

低成長が続くなか、賃金は長期停滞。貯蓄もままならない日々が続いた。

40〜50代・ルールが変わった

日本の伝統的な「年功序列」制度が事実上崩壊し、企業はスキルと成果を重視する方向へ転換。しかし若い頃に体系的な育成を受けられなかった彼らは、コアスキルを積み上げる機会を逸したまま取り残された。

これは競争に負けたのではない。時代の歯車に轢かれたのだ。若いうちに投資されず、中年になってルールだけが変わった。

さらに深刻なのは、長期的な影響だ。この世代が順次リタイアを迎えるとき、一生涯の収入が乏しかった分、年金も貯蓄も不十分な「経済力のない貧困高齢者」が急増する。その社会保障コストを担わなければならないのは、もともと人数の少ない若い世代だ。

40代という立場:複雑な心境と、見過ごされてきた不満

いま40代前後の自分には、これが構造的な不公平に映る——何年も積み上げてきたのに、若い同僚の賃金が急追してくる。一方で自分の年齢層には、リソースが静かに逆流している。

妻がこう漏らしたことがある。会社の若手との給与差がどんどん縮まっているが、自分は彼らより12歳も年上だと。刺さったのは数字だけではない。長年の努力と見返りが噛み合わないという、底深い疲労感だった。

理性的には、受け入れられる話だ。政府と企業が若者にリソースを傾斜させることは、社会全体にとって合理的だ。若者の賃上げは消費の活性化を促し、年金体制の崩壊を多少は遅らせるかもしれない。

感情的には、消化し切れないことがある。この世代が損をしたと、誰も公式に認めてこなかった。日本社会は構造的な問題を個人の「運の悪さ」として処理する習慣がある。氷河期世代はまさにそうやって見えなくされてきた。

求めているのは補償ではない。ただせめて表向きに、この世代の気持ちに少し配慮してほしいというだけだ。コストはほとんどかからない要求だが、まともに向き合われたためしはない。

しかし正直に言えば:40代にも、時代からもらった恩恵がある

不満を語り終えたなら、正直に棚卸しもしなければならない。40代前後は、時代の被害者だけではない。

インターネット黎明期の先行者利益

この世代は、インターネットがまだ「競争が薄かった」頃に入場した最初の人たちだ。ブログ、掲示板、初期のSNS——当時は、ただそこにいて、やって、書くだけで影響力が積み上がった。同じ努力が今の情報の海では波紋すら立てられないのとは対照的だ。

情報非対称がもたらした機会の窓

不動産も株も、特定業界への早期参入も、情報がまだ透明でなく競争が十分に成熟していない時代の話だ。今の若者が直面しているのは「あらゆる機会がアルゴリズムによって適正価格に織り込まれた」市場であり、割安な穴場はほぼ消滅している。

アナログ時代が鍛えた集中力

この世代には、スマートフォンのない子ども時代がある。暇なら本を読み、ぼーっとし、人と実際に向き合うしかなかった。そうして受動的に培われた集中力と忍耐は、今の若者が意識的にトレーニングしなければ身につかないものだ。

二つの世界を渡り歩いた柔軟性

これがおそらく最も微妙な点だ。氷河期世代(50代前後)は旧いルールに傷つけられた人たちだ。20代の若者は、新しいルールがすでに書かれた後に入場した人たちだ。そして40代前後は二つの世界を知っている人たちだ——旧い秩序も十分に経験し、新しい秩序にも間に合って学べる。この立ち位置は、見かけよりずっと柔軟性がある。

これらの時代の恩恵は、受けてきた構造的なプレッシャーを帳消しにするものではない。しかし正直に清算するなら、確かに存在する。

出口戦略:リスキリングは個人だけの責任ではない

「終身雇用制」が崩壊し、日本の賃金体系が国際基準(勤続年数ではなく個人スキル重視)に徐々に近づいている今、中高年が直面するプレッシャーは本物だ。

経済評論家や経営者の多くが指摘する方向性は一つ——リスキリング(技能の再習得)だ。過去の経験に頼るのではなく、外部の新しい知識を積極的に取り込む。

ただし、見落とされがちな前提がある。「転換」をすべて個人に押しつけるのは不公平だ。政府と企業には、中高年のスキル転換を支える場と支援を提供する責任がある。若者向けの通路だけを開いて、中年を自己責任に委ねるべきではない。

個人にできること:外部からの承認を待たず、転用可能なハードスキルを主体的に積み上げる。とりわけデジタルスキルと語学力の強化は有効だ。

政府・企業がすべきこと:40〜50代に向けた実効性のあるスキル転換の経路を整備し、転換コストを個人だけに転嫁しない。

まとめ

日本の賃上げラッシュは、表面上は一面の春景色だ。しかし構造的には、リソースは中高年から若者へと流れている。マクロ的にはその合理性はあるが、もっとも苦しかった時代を歯を食いしばって乗り越えながらも恩恵を受けられなかった人々に対して、その状況を正面から認めた言葉は一度も発せられていない。

40代前後は、本物の挟み撃ちの中にいる。氷河期世代よりは少しましで、今の若者より構造的な優遇は少ない。しかしだからこそ、二つの時代を見てきた経験は、自分が思っているよりずっと大きな資本かもしれない。

不満は本物だ。恩恵も本物だ。この二つを正直に受け止めることが、この時代を冷静に生き抜く出発点ではないだろうか。

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