ハードウェアの準備とバッテリーの安全対策が終わったところで、次に取り組むのはシステムそのものです。クリーンなLinuxサーバーOSをインストールし、無線LANカードを動かしてから自宅のWi-Fiに接続する。ここまでは簡単そうに聞こえますが、実際にやってみると一番つまずきやすい工程でもあります。
一、システムのインストール:純粋な基盤環境を作る
今回はサーバー用OSとしてUbuntu Server LTSを選びます。グラフィカルなデスクトップ環境や娯楽系ソフトを持たないため、ハードウェアの処理能力をできるだけ稼働させるサービスに回せます。
1. 起動USBの作成と基本インストール
別のパソコンでUbuntu Serverのイメージファイルをダウンロードし、Rufusを使ってGPT形式でUSBメモリに書き込みます。USBメモリを古いノートパソコンに挿し、起動時にF10(機種によってはF9)を連打してブートメニューに入り、USBからの起動を選びます。
インストール自体は画面の指示に従うだけですが、特に注意すべき点が二つあります。ディスクのパーティション設定の段階では必ずUse an entire diskを選び、既存のWindowsパーティションを完全に消去して、ディスク領域全体を新しいシステムに渡してください。またサービス選択の画面では必ずInstall OpenSSH Serverにチェックを入れておく必要があります。これを忘れると、インストール後にリモートで接続できなくなります。
2. 一時的なネット接続方法の選び方
インストールとドライバのダウンロードの段階では、システムがインターネットに接続している必要があります。有線LANがすぐに用意できない場合、よくある選択肢は次の二つです。
| 方法 | 利点 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 有線中継 | 帯域が広く安定しており、インストール中にシステムが自動でIPを割り当ててくれる | 中継モードにできるルーターや無線ブリッジが自宅にある場合 |
| スマートフォンのUSBテザリング | 追加のハードウェアが不要で、スマートフォン側で「USBテザリング」をオンにするだけ。システムからはusb0という仮想ネットワークカードとして認識される | 手元にスマートフォンとUSBケーブルしかない場合 |
どちらの方法も、あくまでインストール作業のために一時的にネットワークを「借りる」ものです。システムのインストールが終わり、いよいよ無線接続に切り替えようとした時から、本当の難しさが始まります。
二、無線LANとの格闘:Unavailableエラーへの対処
システムのインストールが終わり、LANケーブルを抜いた状態でsudo nmcli device wifi rescanを実行して周囲の無線信号を探そうとすると、多くの人が次のようなエラーに遭遇します。
Error: Scanning not allowed while unavailable.
このエラーは、システムが無線LANカード(例えばwlo1)自体は認識しているものの、ネットワークサービスの管理権限の所在に問題があり、カードがロックされたまま誰にも制御されていない状態であることを示しています。
Netplanがnetworkdに委ねている
Ubuntu Serverはデフォルトでnetworkdサービスがネットワークを管理します。この仕組みはサーバー用途での静的で予測可能な設定には向いていますが、無線信号のスキャンや切り替えといった対話的な操作にはあまり向いておらず、その結果として無線LANカードがUnavailableと表示されてしまいます。
NetworkManagerに委譲する
Netplanのrenderer設定を書き換えて、ネットワークの制御権をNetworkManagerに渡すことで、無線LANカードが正常にスキャンされ、無線ネットワークに接続できるようになります。
1. 物理的な状態の確認
まず、無線LANカードがハードウェアまたはソフトウェア側でロックされていないか確認します。
rfkill listSoft blocked: yesと表示された場合は、次のコマンドでロックを解除します。
sudo rfkill unblock wifi2. ネットワークの制御権を委譲する(重要な手順)
Netplanの設定ファイルを開きます(ファイル名はシステムによって多少異なる場合があります)。
sudo nano /etc/netplan/50-cloud-init.yaml内容を以下のようにシンプルに書き換え、NetworkManagerに一括して描画(レンダリング)を任せるよう指定します。
network:
version: 2
renderer: NetworkManager保存して終了し(Ctrl + Oで保存、Ctrl + Xで終了)、設定を適用します。
sudo netplan generate
sudo netplan apply3. コマンドラインのみでWi-Fiに接続する
制御権の委譲が終わると無線LANカードの状態は準備完了になります。続いてNetworkManagerに付属する半グラフィカルなツールを使って接続します。
sudo nmtuiActivate a connectionを選ぶと、システムが自動的に周囲の無線信号をスキャンします。自宅のWi-Fi名を選んでパスワードを入力し、エンターキーで確定してください。接続が成功したら、次のコマンドを実行するとルーターから割り当てられたローカルIPアドレスを確認できます。
ip a show dev wlo1システムのインストールが終わり、SSHで接続でき、Wi-Fiも安定してつながるようになれば、ハードウェアとネットワークという二つの関門は突破できたことになります。次回扱うのは、見落としがちな細かい問題です。ディスク容量がなぜ大幅に「目減り」してしまうのか、そしてキーボードや蓋を閉じたときの挙動をどう調整するかについて取り上げます。



