最近、個人的な資産管理や海外送金でWiseやRevolutを活用する機会が増えています。
たまには思う、「そもそも従来の銀行送金と何がそんなに違うのか?」という裏側の仕組みが気になってきました。
過去半世紀近く、世界のクロスボーダー決済はSWIFT(国際銀行間通信協会)の独壇場でした。しかし、WiseのようなFintech企業がその牙城を崩し、私たち個人の送金や中小企業(SME)の決済市場を大きく奪い取っています。

では、伝統的な銀行はただ黙って見ているだけなのでしょうか?実は近年、SWIFTの基盤をアップデートすることで、旧来の銀行網による壮大な「反撃」が始まっています。
根本的な違い:メッセージング vs ローカル資金プール
そもそも、なぜ従来の銀行送金は「遅くて高い」のでしょうか。それはSWIFTが「資金の清算システム」ではなく、単なる「安全なメッセージ伝達ネットワーク」だからです。
- SWIFT(コルレス銀行モデル): まるで国境を越えるバケツリレーです。起点と終点の銀行に直接の取引がないため、資金は1〜3つの中継銀行(コルレス銀行)を経由します。その都度手数料が引かれ、各国の営業時間や時差の影響をモロに受けます。
- Wise(ローカルヘッジモデル): このバケツリレーを完全に回避しています。例えば日本からヨーロッパへ送金する場合、実は資金は国境を越えません。私たちがWiseの日本国内口座(PayPay銀行など)に日本円を振り込むと、APIがトリガーされ、Wiseが保有するヨーロッパのローカル口座から受取人に等価のユーロが振り込まれます。つまり、実態は単なる「2つの国内送金」の組み合わせなのです。
銀行側(SWIFT)の反撃の武器
シェアを奪われた銀行側も、ただ指をくわえているわけではありません。SWIFTを中心に、大きく3つの反撃策を打ち出しています。
1. SWIFT gpi(Global Payment Innovation) かつてのSWIFT送金は、いつ届くか、いくら中継手数料が引かれるか分からない「ブラックボックス」でした。しかしgpiの導入により、宅配便の追跡番号のように資金のトラッキングが可能になりました。現在では送金の約50%が5分以内に着金するようになっており、Wiseのスピードにかなり迫ってきています。
2. SWIFT Go これがWiseへの直接的な対抗馬です。これまで大企業向けのインフラだったSWIFTを、中小企業や個人向けの少額送金(1万ドル以下)に最適化しました。手数料の透明性を高め、秒単位での着金を保証する仕組みです。
3. ISO 20022への全面移行 自動化ツールを触る人間からすると、技術的に一番面白いポイントがこれです。古い電文フォーマット(MT)から、情報量の多いXMLベース(ISO 20022)への移行が進んでいます。コンプライアンス(AML/KYC)審査での遅延が減るだけでなく、データがリッチになるため、ゆくゆくは企業側の自動消込やAPIを介した資金管理の自動化ワークフローと非常に相性が良くなるはずです。
競争から融合へ
この競争、どちらかが完全に勝つという単純な話では終わらなさそうです。
最近では、自前で越境決済の仕組みを作るのを諦めた地方銀行が、「Wise Platform(B2B向けAPI)」を直接導入し、自社の銀行アプリの裏側でWiseのネットワークを動かすケースが増えています。 逆にWise側も、マイナーな通貨をカバーするためにSWIFTのネットワークを利用したり、各国の直接清算システム(イギリスのFaster Paymentsなど)に接続して、より「銀行らしい」姿に近づきつつあります。
まとめ
今後、私たちのクロスボーダーな資金管理の選択肢もさらに広がりそうです。APIネイティブなWiseやRevolutの機動力と、重厚長大ながら確実に進化するSWIFT網。これらをどう組み合わせて日々の自動記帳や資産管理のワークフローに落とし込むか、引き続きいろいろいじりながら検証していきたいと思います。