
日本に長く住んでいると、毎年春に値上げのニュースが重なる季節があることがわかってくる。2025年4月は、その規模がいつもより一段大きかった。大手電力10社・大手都市ガス4社がそろって4月使用分(5月請求分)からの値上げを発表し、補助金の終了と再エネ賦課金の引き上げという二つの要因が同時に重なった。
今回の値上げ幅
合計するとざっくり毎月500〜600円ほどの負担増になる。「それだけか」と思うかもしれないが、この数字は今月限りの話ではないというのが問題だ。
なぜ今このタイミングで値上がりするのか
今回は二つの要因が重なっている。
1. 政府の補助金が3月末で終了した
ここ数年、エネルギー価格の高騰と円安の影響を受け、日本政府は公的資金で家庭の電気・ガス代の一部を肩代わりしてきた。2023年1月から始まった補助は、延長と再開を繰り返しながら続いてきたが、2025年3月使用分をもって終了した。
日本経済新聞の報道によれば、2023年以来この補助に投じられた累計予算は4.3兆円を超えている。補助が外れることで、これまで抑えられていたコストが請求書にそのまま反映される形になった。
2. 再エネ賦課金の単価が引き上げられた
毎月の電気代に含まれているこの項目を意識している人は多くないかもしれない。経済産業省は2025年度の再エネ賦課金単価を1kWhあたり3.98円に設定した。前年度の3.49円から約14%の引き上げで、制度開始以来の最高値となる。
月400kWh使用する標準家庭では、この項目だけで月1,592円・年間約1万9,000円の負担になる。電気代全体の約1割を占める金額で、無視できるレベルではない。
根本にある問題:エネルギー構造の脆弱性
気になるのは請求書の数字だけではない。日本のエネルギー自給率は約11.8%で、OECD加盟国のなかでもかなり低い水準にある。エネルギー需要の約90%を、海外からの石油・石炭・LNG(液化天然ガス)の輸入で賄っている。
これが意味するのは、中東情勢が緊迫したりLNG供給が滞ったりすると、そのコスト増が時間差で電気代に直撃するということだ。研究者の分析でも、近年の電気代高騰の主因は再エネ賦課金ではなく化石燃料の輸入価格の急騰にあると指摘されており、日本の電気代はLNG価格の動きに強く連動していることが確認されている。補助金でしばらく緩和することはできても、この構造的な脆弱性そのものは変わらない。
インフレはまだ続いている
エネルギーの値上がりは、物価全体が動いているなかのひとつの断面に過ぎない。2025年4月の国内企業物価指数(PPI)は前年同月比4.0%の上昇で、指数値は8か月連続で過去最高を更新した。
エネルギーが高くなれば輸送コストも上がり、製造コストも上がる。その連鎖が、あらゆるものの価格に波及していく。加えて、ここ数年は名目賃金の上昇が物価の上昇に追いつかず、実質賃金がマイナス圏で推移してきた時期が続いた。支払うものは増えているのに、手取りがそれに追いつかない——そういった感覚を持っている人は、決して少なくないだろう。
個人でできることは、正直なところ限られている
電気代もガス代も、削ろうにも限界がある固定費だ。冷暖房、料理、入浴——現代の生活の快適さは、ほぼエネルギーの上に成り立っている。
節電・節ガスの努力はもちろん有効だ。より根本的な対応としては、屋根への太陽光パネルの設置など自家消費型の発電を導入することで、電力の購入量を減らし再エネ賦課金の実質的な負担を抑えることができる。ただし初期投資が必要で、賃貸住まいの人にとっては現実的な選択肢ではない。
まとめ
今回の値上がりは、補助金の終了と再エネ賦課金の引き上げが重なった結果だ。ただその背景には、エネルギーの約90%を輸入に頼り、国際市場の動向に大きく左右されるという日本の構造的な課題がある。短期的な解決策はなく、生活コストの上昇を前提として家計の組み立てを考え直す時期に来ているというのが、正直なところだと思う。



