年収1億円で家賃21万円、何が問題なのか

年収1億円で家賃21万円、何が問題なのか

少し前に話題になっていた婚活リアリティーショーで、印象に残った場面があります。年収1億円、東京大学卒の男性出演者が、家賃21万円のマンションに住んでいることを、番組内で婚活アドバイザーから指摘されていました。アドバイザーの言葉を借りれば「バランスが悪い」、年収1億円ともなれば、家賃100万円から150万円くらいの部屋に住むのが自然だという理屈です。本人の返答はいたってシンプルで、物欲も見栄もないので、その必要を感じないというものでした。

表面的には「住居費をどこまでかけるべきか」という話に見えますが、もう少し掘ってみると、もっと考える価値のある問いに行き着きます。結婚相手を探すという行為は、そもそも「自分に合う人を見つけること」なのか、それとも「より多くの人に選ばれること」なのか、という問いです。

二つの異なる評価基準

アドバイザーの助言の背景には、婚活市場で広く共有されている一種の経験則があります。収入と消費水準を一致させ、その消費水準を通じて「誠実さ」や「実力」を相手に伝える。この発想が目指しているのは、結局のところ候補者集団の中での自分の競争力を高めること、つまりより多くの人に選ばれることです。

しかし、結婚活動と就職活動は本質的に違います。就職活動は一方的、あるいは最近では双方的な選別であり、企業は多数の候補者から最も適した人を選び、候補者側も自分の最も強い面を見せようとします。一方、結婚相手探しの核心にあるのは競争で勝つことではなく、相性が合うかどうかです。どんな広さの家に住み、どんな車に乗っているか。こうした情報は確かにある程度生活スタイルや価値観を反映しますが、それを「達成すべき基準」として扱ってしまうと、結婚相手を探すという行為そのものが、就職面接の枠組みに当てはめられてしまうことになります。

目的が「より多くの人に選ばれること」であれば、信号としての消費を最適化する意味はあります。しかし目的が「本当に合う人を見つけること」であるなら、その最適化はむしろ妨げになりかねません。なぜなら、それによって引き寄せられるのは、信号に反応した人であって、必ずしも本当に相性の良い人ではないからです。

家賃21万円のどこに問題があるのか

住居そのものについて考えれば、一人暮らしであれば、それほど広い部屋は必要ないというのは自然な発想です。清潔で、自分が心地よく過ごせれば、それで十分という考え方も十分に成り立ちます。本当に結婚することになれば、その時点でより広い部屋に住み替えればよく、しかもその段階では相手も一緒に住む場所を決める過程に関わるはずです。婚前の段階で、一方的にその消費を先取りする必要はないように思います。

番組内で女性出演者本人が見せた反応も、実際にはかなり淡々としたものでした。リビングが少し細長く、待合室のようだと感じた、という程度のもので、好奇心や軽い驚きの範囲を出るものではありません。アドバイザーが想定したような、「不快に感じる」「誠意を疑う」といった反応ではなかったように見受けられます。つまりアドバイザーの判断は、本人の実際の反応というより、女性側がどう感じるだろうかという推測に基づいたものだったとも言えます。

区別して考えるべき点:男性出演者は、小さな部屋に住んでいる理由を「物欲も見栄もないから」と説明していましたが、この自己評価自体はそのまま受け取れるものではありません。年収1億円という情報は番組内で公開されており、しかも彼が出演しているのは、男性出演者を年収でランキング付けして見せる番組です。物質や肩書きに本当に無頓着であれば、この点には矛盾が残ります。ただ、この自己評価が必ずしも正確でないとしても、それは本人が自分自身を理解する精度の問題であり、「小さな部屋に住んでいることが批判されるべき理由」にはなりません。生活が質素であることの背景には、本当に気にしていない場合もあれば、単に深く考えていなかった場合もあります。どちらであっても、それを他人が「正しくない」と判断する立場にはないはずです。

消費水準と人柄を結びつけることの方が、本当は議論の余地がある

アドバイザーの「年収1億円なら、もっと高い家賃の部屋に住むべき」という言葉の背景には、ひとつの前提があります。それは、消費水準が、その人の誠実さや実力を表すはずだ、表すべきだという前提です。この前提は、従来型の婚活市場の文脈では一定の説得力を持つかもしれませんが、現在の価値観に照らすと、必ずしも自明とは言えません。ある人が関係に真剣に向き合おうとするかどうかと、どれくらいの家賃の部屋に住んでいるかは、もともと直接結びつくものではないはずです。

本当に考える価値があるのは、「家賃21万円で十分か」という個別の問いよりも、婚活アドバイザーのような立場の人が、すべての参加者を「市場での競争力」という単一の基準で測ろうとする習慣そのものではないかと思います。そしてその基準が、「本当に合う人を見つける」という目的とどれだけ関係しているのか、一度立ち止まって考えてみる価値はあるはずです。

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